聴覚障害者向けブログ「なん×けんカフェ」のコンセプト

ソウ
ソウ

このブログにはどんなことが書いてあるかをお話します。

「なん×けんカフェ」の管理人のソウです。

さっそくですが、当ブログのコンセプトは「自分の聴覚障害について、自分自身で説明できる力をつけよう」というものです。

たとえば「僕は聴覚障害があります。音が聞こえないので口頭での説明はわかりませんが、筆談で話してもらえると内容が理解できます」という「自分の聞こえ方」について学校の先生やクラスメイト、会社の上司や同僚に伝えられることを目指します。

自分の障害について正確に説明できると、どんなメリットがあるの?

なぜ僕が「自分の聴覚障害について説明する力を身に付ける」ことを推してるのかというと…

それはズバリ自分が楽に生きられるからです!

どういうことなのかというと、たとえば「口を読むのは疲れるから筆談で話してほしいな…」と考えているのに、上司や同僚が声でしか話しかけてこない…って場面ありませんか?

自分の障害を説明するスキルがなかったころの僕は、ただひたすら相手の口元をじっと見つめていました。

だけど、相手に「筆談してほしい」とわかってもらうには、当事者の僕が黙ってたらわかんないんですよね。

向こうは読心術が使えないから僕の気持ちを察することは不可能で、自分から積極的に「書いてほしいですー!」と言わないと伝わんない。

それに気づいた僕は、今は下の吹き出しのように説明することを心がけています。

ソウ
ソウ

ややこしい話は口読めないし、口形が読みやすい人と読みづらい人がいて精度が安定しないので可能なら筆談でお願いしたいです

上司
上司

わかった!筆談の方がいいんだね

そうすれば相手もわかってくれて、次から筆談で話しかけてくれるようになります。

僕もわからない単語を前後の文脈から推測したり、じーっと相手の口元を凝視したりする必要がなくなります。

何回も繰り返し聞き返さなくても文字で言葉が理解できるので、「口形を読まなきゃ!」というプレッシャーがきれいさっぱりなくなります。

「聴者のため」に自分のことを説明するのではなくて、僕たち聴覚障害者が負担なく生きるために説明力が必要なんです。

自分の聞こえ方について説明する機会がないのが問題

「自分から説明することが大事」とはいうものの…

聴覚障害者本人が自ら「自分の聞こえ方」について話す機会ってかなり少なくないですか?

たとえば学校だと、僕に代わって親が担任の先生に聞こえ方を説明する場面がほとんどだと思います。

母

うちのソウは聴覚障害者があって、声を聞くことはできません。なのでこういう配慮をしていただきたいんです。

担任
担任

わかりました。私からもクラスの皆に説明しておきます。

そして、親の話を聞いた先生が僕の代わりにクラスメートに説明していました。

担任
担任

ソウさんは耳が聞こえません。だから口の動きを読んで話をしています

クラスの子
クラスの子

わかりました!ソウくんよろしくね!

「説明の仕方」を知る必要がある

これの何が問題なのかというと…

「親→先生への説明」も「先生→クラスメートへの説明」も、僕の知らない所で行われていたのが問題でした。

僕の耳のことを、どんな言葉で、どんなニュアンスで説明していたのか全然わかりませんでした。

だから、大人になっても僕は自分の聴覚障害についてどんな言葉で説明すればいいかさっぱりわからなかったんです。

たとえば漢字を覚えるときなんかも、まず「漢字の型」を知らないとその文字を書けるようにはなりませんよね?

たくさん漢字を書いて経験を積んで、それでやっと漢字をスラスラ書けるようになるんです。

それと同じで僕は「説明の型」を知らなかったので、自分のことを相手に伝えられませんでした。

僕が自分のことを説明できるようになるまでの過程

そんな僕でしたが、社会人になったときに自分を変えるきっかけとなった出来事がありました。

直属の上司と初めて会ったときに「どうやって喋ったらいい?」と向こうから直接聞いてくれたんです。

「声は聞こえないから口を読んでるんです」と、そのとき自分のことを自分の言葉で説明する機会を得られました。

もちろん、「説明の型」を知らなかったころの僕の言葉はわかりづらかったかもしれないんですが…

上司
上司

それってこういうこと?

上司
上司

僕(上司)の口形は読めるけど、○○さんの口形は読みにくいのかな?

上司は自身が気づいたことをこんなふうに言葉にしてくれました。

それで僕自身も「あ、こう話したら伝わるんだ!」と「どんな言葉で説明したらいいのか」がだんだん理解できるようになりました。

当時の会社は辞めてしまったんですが、上司とのやり取りで培った説明力は今の転職先でも生きています。

人生の選択肢を増やすための説明力

もしあなたが今、過去の僕と同じように「自分に合ったコミュニケーションがとれなくてしんどい」と感じていたら、僕がこれまでに培ってきた説明力を磨く方法を伝えたいです。

どうして伝えたいのかというと、説明力を鍛えることで「できないこと」「やらせてもらえないこと」が「できること」に変わる可能性があるからです。

世の中には、「聴覚障害者だから採用しません」「聞こえないからこの仕事は危険です。別の仕事をしてもらいます」という企業があります。

実際に僕も転職先でとある資格を取りたいと伝えた際に、会社の上層部からこんなことを言われました。

上層部
上層部

ソウさんが資格を取る能力があるのは理解してるけど、聞こえないから危険なんじゃないか?

そのときも、僕はこれまで培ってきた説明力を駆使して「たしかに○○という危険性がありますが、毎回目視確認を行うことで健聴者と同じ水準での安全を保てると考えています」と伝えました。

直属の上司も「聞こえないからといって特段危険性が上がるわけではない」と助言してくれたのもあって、上層部は納得してくれました。

そして僕は資格を取得できて、今はその資格を生かして働いています。

このように「相手が納得できるように説明する能力を身に付けること」が、僕たち聴覚障害者の選択肢を広げる手助けになると思うんです。

でも僕ひとりの力で選択肢を増やすのは限界があります。

昔、重度難聴の人は運転免許が取れなかった制度を変えたときのように、みんなで声を上げないと僕たちが生きやすい世界はつくれません。

僕たちが自分のできること・やりたいことをできるようになるために、あなたの力が必要なんです。

だから一緒に頑張りませんか?

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