僕は学生時代耳のことが原因で不登校になった経験もありますが、社会人になってからは自分の障害のことで悩む機会が減りました。
学生時代は4人グループとかで行動することもあって、会話が全部声で進むから「いま何が起きているのか」がわからなくて不安になってしまうんですよね。
同じ空間にいるのに自分だけが取り残されているように感じるあの瞬間は、心地よいものではありません。
昔の僕は「聴者の世界怖い」と思ってたんですけど、社会人になってから「生きやすい!」と感じるようになりました。

どうして社会人になったら不安が消えたのか、僕の経験談を話していきます。
学生時代よりも会社にいる方が生きやすい理由
まず、会社で働く方がなぜ生きやすいのか理由を伝えます。
会社は1対1での会話が主になるから
冒頭でも少しお話ししたように、学生時代ってグループ行動が多いじゃないですか。
授業も先生が口頭で生徒全員に話すし、休み時間もお昼ごはんのときもずーーーっと声で会話が進んじゃうんですよね。
学校だとスマホが使用禁止なところもあるから、今の学生さんも音声認識アプリに頼れなくてしんどい思いをしているかもしれません。

社会は学校よりも厳しいぞ!!!
…なんて言われた日にゃ、「今ですら地獄の辛さなのにこれ以上しんどいなんて考えられない…」と思っていました。
なんだけど、会社では「ミス事例」とか「作業内容変更」とかの情報を個別に伝えてくれたり、文書が回ってきたりするところもあります。
シフト制の会社なんかは全員揃うことが少ないので、学校のような口頭での情報共有が難しくて個別連絡が主になる会社もあります。土日祝休みにこだわりがなかったらシフト制の会社おすすめです!
イレギュラーが起きた場合の連絡が個別で伝えられるから
学校だと「授業が変更になった」とか「テストの範囲」とか「宿題ここからここまで」とか、さまざまな連絡事項がありますよね。
テスト前とか終業式前とかはイレギュラーが起こりやすいのですが、それも一斉連絡で伝えられるので僕ら聴覚障害者には伝わらないシーンが多いです。
会社で働いてからもイレギュラーなことはもちろん起こりえます。
だけど、会社では上司が「○○の仕事の担当者」に対して直接「こういうミスがあったので対応してください」と伝えてくることが多いです。
基本的に自分の業務に関わることであれば、1対1で連絡を受け取れる仕組みになっています。
口頭で全体に伝える場合と違って、1対1での会話なら筆談やアプリなどでギリなんとか理解できるので難易度は下がります。
他の人が起こしたミスの事例共有や、全体共有する連絡事項などは朝礼などで全員に周知する場合もあります。
とはいえこれは「テストの範囲」のように「わからなかったら自分が困る」という事態にはなりづらいです。

なので、全体連絡が主な学校よりも会社の方が僕にとっては情報保障が整っていると感じました。
スマホやパソコンなどでコミュニケーションがとれるから
これも会社によるんですけど、僕が働いている会社ではスマホが使用できるのでコミュニケーションが楽です。
業務連絡用のグループラインがあるので、何か連絡したいときはラインで文字で伝えられます。
また、友人の会社ではスマホは使用禁止なものの、パソコンを使って筆談でコミュニケーションがとれる環境だそうです。
学校だと携帯・スマホが使用禁止なところもあって、口形が読みづらい人とは会話がしづらくなります。
ですが会社では「UDトーク」や「YY文字起こし」などの音声認識アプリが使えるので、口形が読みづらい人相手でもなんとか話を成立させられる可能性が上がります。
「声で話せ」と言われないから
中途半端に口話が使える僕は、発音が不明瞭でも周りの大人に「声で話そう!」と言われることが多かったです。
初対面の人と筆談で話そうとしたら、「声きれいなんだから筆談に頼らない方がいいよ!」と言われてしまったので、僕は無理やり声で話していました。
こっちが声で話すと向こうも声で話してくるので、「口形読めなくてわからない」→「人と話すの怖い」ってなるから僕は筆談で話したかったんですけどね…。
でも、社会人になると「声で話すこと」がマナーだという価値観を持つ人はぐっと減ります。
筆談をしても普通にうんうんと聞いてくれるし、むしろ「筆談で話してほしい」と言ってくれる人もいるから気が楽なんですよね。
僕は発音の訓練の成果が出なかったので、社会人になって「声で話せ」と言われなくなったのがすごく心が軽くなりました。
自分が大人になったからこそ、「筆談に頼らないで声で話そうよ!」と言ってくる人がいたとしても「いや、僕の伝えたいことを正確に伝えたいので筆談で話します」と反論できるようになりました。
子どもだったころと違って、親や周りの大人と対等な立場で戦えるようになったのも生きやすいポイントかなと思っています。
休憩時間を1人で過ごせるから
学校よりも会社の方が楽な理由として、休憩時間を1人で過ごせるのもメリットでした。
僕が住んでいる地域は車社会なので、お昼休憩になったら車で外に出てコンビニへ行ってご飯を食べられるのが楽です。(夏場は地獄だけどね…)
学生時代に4人グループでの会話についていけなさすぎて、自分だけ取り残されたような感覚を味わっていたので、今ひとりで休憩できるのがすごく安心します。
どんな業種だと過ごしやすい/過ごしにくいの?
上のケースみたいに「スマホが使える」とか「休憩を1人で取れる」とかは、残念ながらすべての会社にあてはまるわけではありません。
ここでは僕の実際に働いてきた会社や面接に行った会社、知人友人から聞いた情報をもとに、「どんな会社だったら聴覚障害者が過ごしやすいのか」を簡単にまとめました。
過ごしやすい業種①倉庫業
倉庫内はフォークリフトが走り回るため、「聴覚障害者はリフトの音が聞こえないから危険だ」という理由で採用を断られがちですが…
僕は倉庫業が聴覚障害者にとって働きやすい環境だと感じています。
なぜかというと、基本的な作業がすべて視覚で行われるからです。
- 商品名を見る
- 数量を数える
- 段ボールを出荷先別に積み上げる
- 段ボールの個数を数えてリストと合ってるか確認する
といった感じで、1人でコツコツモクモクと作業を進めていけるので僕ら聴覚障害者に向いてます。
ただリフトが走ってるエリアでは、一瞬たりとも気を抜かずに前後左右に気を配らないとダメですが。
過ごしやすい業種②事務職
これは僕の話ではありませんが、事務職に就いている聴覚障害者が複数いるのでおそらく事務職も働きやすい環境なのだと思います。
事務職だと机がそこら中にあって筆談がしやすそうなのがメリットかなと感じました。(倉庫業だと基本立ったまま筆談するので、台がないと手がプルプルする)
あとリフトなど危ないものが走ってないので、人との衝突以外に危険性が少ないのもいいところかなと思います。
過ごしやすい業種③製造業
工場などでの製造業も聴覚障害者が複数働いています。
友達の会社では、携帯電話や自動車などの部品を作る業務に就いているという話を聞きました。
過ごしにくい業種①食品製造業
僕が昔面接へ行った会社は食品の製造にかかわるところでした。
そこはお客様の口に入る商品を扱うため、衛生管理をきちんとしないといけません。
そのため常時マスク必須だったので、口形を読むことができません。
さらに滅菌された手袋をはめて作業をしないといけなかったので、手に触れるスマホやメモの持ち込みもおそらく難しかったのかなと思います。
マスクを外して口を読むのも、筆談で話すのも難しそうだったので、僕のような重度難聴の人間には向いてないかもしれません。
まとめ
僕自身が社会人になってから生きやすくなったと感じた理由を簡単に振り返ります。
- スマホが使える
- 業務連絡が個別に来る
- 筆談で話せる
というのが主な理由です。
もしこのブログを読んでいる学生さんやその親御さんがいましたら「大人になったら楽になるんだ」と感じてもらえると嬉しいです。
ていっても僕が学生時代にどこの誰か知らない大人にこんなこと言われても「は⁉今がしんどいんだけど⁉」とピリピリしちゃってたと思うんだけどね…。
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